推しに告白(嘘)されまして。




「だからそこで鉄子に玉砕大作戦なんだよ!」



暗い空気が流れる中、私が足を止めることになった原因の作戦を声高々に言う者が現れた。



「あの堅物風紀委員長に悠里が告白して、玉砕するんだ!その後は失恋で傷心中のフリをして、しばらく恋愛はいい、告白されると玉砕のトラウマが蘇る…とか言って悠里への告白の嵐を止めるんだよ!」



声だけしか聞こえないが、私への玉砕大作戦を推す男子生徒は周りにそれはそれはもう熱く作戦内容を説明している。
そしてそんな彼の作戦にバスケ部員たちはざわざわと騒ぎ始めた。



「いいんじゃねぇか?」

「それが一番丸く収まる気がするな」

「鉄子なら万が一がなさそうだしね」



何と失礼なやつらだ。

好き勝手にいろいろなことを言っているバスケ部員たちに呆れて小さなため息を吐く。

推しに告白されるんだぞ?万が一しかないでしょうが。
ごめんけど告白受け入れて彼女になっちゃうからね?
要は沢村くんがもうこれ以上告白されなければいいんでしょ?
だったら別に沢村くんを振らなくても、彼女として私が壁になればいいんじゃない?



「それはダメだろ」



賛成多数の中、たった1人だけが反対の声を上げる。
この透き通ったようなイケボは私の推し、沢村くんだ。



「好きでもないのに鉄崎さんに告白するなんて不誠実すぎるだろ。鉄崎さんで遊ぶようなものだ」



ただ1人私のことを思って声音を低くした沢村くんに胸がぎゅぅっと締め付けられる。
私の推しはなんて優しいのだろうか。



「だったら今いるお前のことを好きな女子を全員何とかして普通に練習に出てこい」

「鉄子なら大丈夫だって。アイツは風紀を守ることに命かけてるから。恋なんてしている場合じゃないから。お前なんてバッサリ振られるよ」

「ちゃんと現実見ましょうね?」



唯一反対意見を言った沢村くんにその場にいたバスケ部員たちが様々な声を沢村くんにかける。
どれも唯一反対している沢村くんを責めるような内容のものだ。

その場いる複数人に責められて、沢村くんは黙ってしまった。
残念だ。推しの声が全く聞こえない。


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