推しに告白(嘘)されまして。
ここはカップル席。
生徒たちの後ろとはいえ、常に誰かが私たちを見てる。
つい先ほど白雪王子での、千晴の問題行動により、千晴と私が付き合っているという大嘘噂は、かなり盛り上がりを見せていた。
きっとその大嘘噂に対抗するために、今、悠里くんはこうしてる。
そこに私への好意はない。
ただバスケの為の行動にすぎない。
勘違いしてはいけない。
私は常識のある、悠里くんを推す者。
きちんとした距離で悠里くんを推すのだ。
決して、悠里くんの真面目さに絆されてはいけないのだ。
「…わ、私も、です」
けれど、推しの〝好き〟に応えずにはいられなかった。
「どのくらい好き?」
「え」
「教えて欲しい。ちゃんと一番?」
不安げに、寂しそうに、悠里くんが、こちらをおずおずと見つめる。
甘い瞳は、私からの答えを待ち、恋焦がれているようで。
甘すぎる悠里くんに私の心臓はドンドコドンドコ暴れ出した。
推し、尊い。
「一番好きだよ」
照れながらも、事実を口にする。
その時、一瞬だけ、あの金髪が頭をよぎった。
柔らかく「先輩」と呼ぶ声が何故か聞こえた気がして。
ほんの少しだけそれが胸につっかえたが、私はそれを無視した。
そんなことより、今は目の前の推しだ。
私の答えに、「よかった」と悠里くんは微笑む。
しかしその表情はどこか暗かった。