推しに告白(嘘)されまして。
「…わかってる。あれは演技だって。嫉妬するものじゃないって。わかってるけど…」
眉にシワを寄せ、悠里くんは辛そうに思いを吐く。
それから一旦言葉を止め、ゆっくりと続けた。
「俺ともまだなのに…」
推しが辛そうに私を見ている。
綺麗な瞳はどこか仄暗く、とてもじゃないが、大丈夫そうには見えない。
その葛藤に私の胸はぎゅーんっ締め付けられた。
推しが苦しんでいる。
それなのにキュンキュンしてしまう自分が、どれほど不謹慎であるかは、十分わかっている。
けれど、あの悠里くんが、こんなにも甘く嫉妬してくれているのだ。
例え演技だとしても、彼氏として真面目に私と向き合ってくれた結果だとしても、嬉しくて嬉しくて仕方ない。
偽りの嫉妬でも私はいい。
その嫉妬でぜひ、私を縛って欲しい。
「…俺も柚子とキスしたい。ダメ?」
上目遣いで、おそるおそるこちらを伺う悠里くんに、ついに私はやられてしまった。
罪深すぎるその表情に、ゴクッと喉が鳴る。
か、かっこよくて、かわいいなんて、反則だ。
私の推し、悠里くんは、世界を救うのではなく、世界を破滅させるのかもしれない。
「…うん」
バクバクとうるさい心臓を抑えて、ゆっくりと、だが、確かに頷く。
私の答えに、悠里くんは頬を赤らめたまま、瞳を伏せた。
「じゃあ…」
それだけ、静かに言って、悠里くんがカーテンを閉める。
カーテンを閉めたことによって、この空間は私たちだけのものになった。