推しに告白(嘘)されまして。




バンドの歌声に、生徒たちの楽しそうな声。
外は確かに賑やかなはずなのに、ここには何も聞こえない。

2人だけの世界で、私はゆっくりと瞳を閉じた。



「…」



キ、キスってどこにするのかな。
話の流れ的に、く、唇だよね?

恥ずかしさと嬉しさといろいろな感情がぐちゃぐちゃに混ざって、もう何が何だかわからない。

ドキドキと胸を高鳴らせながらも、ただただ悠里くんからのキスを待ち続けていると、おでこにそっと何が触れた。
柔らかくて、熱い。

ーーーー唇だ。



「…っ」



お、おでこかぁ。

予想外の場所へのキスに、頬を赤くしたまま、瞳を開ける。
唇ではなかったが、それでも推しからのキスに、嬉しくて嬉しくて、私は表情を緩ませた。

きっとこれが最初で最後、貴重な一瞬だった。

嬉しさでいっぱいになりながらも、視線を前へと向ける。
すると、至近距離で悠里くんと目が合った。

綺麗な瞳がまだ熱を持ったまま、私を捉えている。


< 203 / 345 >

この作品をシェア

pagetop