推しに告白(嘘)されまして。
「…あれ、ファーストキスだった?」
色っぽく、けれど、寂しそうな悠里くんの声音。
悠里くんの言っている、〝あれ〟とはおそらく、舞台上での千晴とのキスなのだろう。
ーーーあれは確かに私のファーストキスだった。
おずおずと悠里くんに頷く。
それを見て、悠里くんは一瞬だけ、辛そうな表情を浮かべた。
そして、そのまま私の唇へと自身の唇を寄せた。
「…っ!」
突然の唇へのキスに大きく目を見開く。
まさか今、唇を重ねるとは。
恥ずかしさで、ギュッと目を閉じると、唇を悠里くんに遠慮がちに舐められた。
「な、ゆ、ふんんっ」
驚きのあまり、反射的に悠里くんの名前を呼ぼうとした。
しかし、それは悠里くんによって遮られた。
私の口元が緩んだほんの一瞬の隙をついて、悠里くんは私の中へと舌を這わせたのだ。
「んん、ん」
甘い声がこの場に静かに響く。
その中には、小さな悠里くんの息遣いもあり、この空間をより一層甘くさせた。
クラクラして、倒れそう。