推しに告白(嘘)されまして。




どうやらカップル席周辺で、聞き耳を立てていた生徒たちが、私たちがカーテンを閉めて、いろいろとやり始めたらしいと勘違いしてしまったのだ。
その噂は瞬く間に広がり、しばらくは非常に恥ずかしい思いをした。
あんなところでそんなことするはずがないのに、まるで真実のように語られ、困ったし、最終的には、生徒会長自らの指導が入った。

「風紀委員長であるお前が何、一番に風紀を乱しているんだ」、と。

とんでもない勘違いだ、濡れ衣だ、と一生懸命釈明したが、深めのキスを何度もしてしまったことは事実だったので、最後には謝罪した。
もう公衆の面前であんなことは誓ってしない、と言って。



「この調子だと、クリスマスも一緒に過ごすんでしょ?楽しみね」

「…あー。いや、それはないんだよねぇ」



はは、と小さく笑った私に、雪乃が不思議そうに首を傾げる。
「何で?」と視線で訴える雪乃に私はゆっくりと口を開いた。



「ウィンターカップがあるからね、23〜29。だから絶対無理なんだよ」



鷹野高校バスケ部は、見事地方大会を優勝し、去年と同様、ウィンターカップへのチケットを手に入れていた。
その喜ばしい結果の為、悠里くんはクリスマスもバスケなのだ。

平然としている私に、雪乃は「ふーん。じゃあ、仕方ないね」と特に気にしていない様子で言った。
おそらく、私が気にしていないからそうなのだろう。



「けど、悠里くんがずっと頑張ってきた努力が形になって私は嬉しいの。ウィンターカップがゴールじゃないけどさ、でもきちんと一つ一つが達成されている、ていうか、実を結び始めている、ていうか。その結果に少しでも貢献できている私が誇らしくて…」



悠里くんのことになると、話が止まらない。
箸を止め、いつものように笑顔で、雪乃に思いの丈をぶつける。
そんな私に雪乃は「へぇ」や「ふーん」などと適当な相槌を打ちながら、慣れた様子で弁当を食べて進めていたのであった。



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