推しに告白(嘘)されまして。




「それじゃあ、私たちはこれで。明日こそ、ちゃんとした服装で来なさいよ?」



ポン、と千晴の肩を軽く叩き、悠里くんと再び歩き出す。
…だが、千晴は何故か悠里くんのいない私の左隣に並び、一緒に歩き始めた。

3人で歩くとどうしても、以前、勉強会後に一緒に帰った気まずすぎる時間を思い出してしまう。
悠里くんと千晴は相性が最悪なのだ。



「ねぇねぇ先輩」

「…何?」



これから始まるであろう気まずすぎる時間に、気を引き締めていると、千晴が早速楽しげに話しかけてきた。



「文化祭で最優秀賞になったらお願いなんでも聞いてくれるって言ってたじゃん?あれでお願いしたいことがあるんだけど」

「あー。あったね、そんなこと」



千晴の話に、私はそうだった、と頷く。
文化祭開始前に、確かに私は千晴と約束した。
最優秀賞になったら、何でもお願いを聞く、と。

そういえばせっかく最優秀賞になったのに、まだ私は千晴からのお願いを聞いていない。
一体何を願うのかと、千晴からの次の言葉を待っていると、千晴は徐に口を開いた。



「12月24、25に住み込みで俺の家のメイドさんになってよ」

「はい?」



まさかのお願いに目を丸くする。

住み込みでメイドになれって、バイトをして欲しいってことか?
世間的にはクリスマスだし、私にお願いするくらい深刻な人手不足なのか?



「わかった。24、25ね」



よくわからないが、それが千晴からのお願いならと私は快く頷いた。



「え」



しかし、右隣にいた悠里くんはそれに驚いたように声をあげた。
千晴はとても嬉しそうだ。



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