推しに告白(嘘)されまして。

2.柚子、メイドになる




*****



12月24日。
千晴との約束の日。

私は自分の部屋で、千晴の迎えを待ちながらも、一泊二日の泊まり込みバイトで必要なものを鞄に詰めていた。
…と、いっても、千晴からは特に何も持ってこなくていいと言われている。
その為、私はいつも出かける時に使っているトートバッグに、とりあえず財布とスマホを入れて、あとは何が必要か考えていた。

ハンカチは服の方に入れるので、バッグに入れる必要はない。
筆記用具とメモ帳くらいはいるだろうか?

うんうんと1人で考えながらも、必要そうなものを入れては、出してを繰り返す。
結局、いつもと変わらぬ荷物を準備できたところで、私は最後に、愛用している茶色のマフラーを首に巻きつけた。

その時、それは聞こえてきた。

ピンポーン、と家のチャイムが鳴り、「あらぁ」という、いつものお母さんの声が聞こえる。
千晴が迎えにでも来たのかな、と何となく思い、鞄を肩にかけると、お母さんは明るく言った。



「柚子〜!彼氏さんが迎えに来たわよ〜!」



えーー!!!!!
悠里くん!!!???

お母さんの言葉に驚いて、慌てて、扉を開ける。

悠里くんは今日、ウィンターカップだったはずだ。
確か今日が初戦で、ここにいるわけがない。
だが、もしかしたら、私の顔を一目見ようと来てくれたのかもしれない。

そうだ、絶対にそうだ!

ドタバタと廊下から階段へと向かい、急いで降りると、見慣れたお母さんの背中とーーーー。



「先輩、おはよ」



ふわりと笑う金髪美人、千晴が立っていた。



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