推しに告白(嘘)されまして。
「先輩、ここ座って?」
自身の足を広げて、ポンポンとその間を千晴が叩く。
こんなにも広いソファで、何故そんな狭い所へと座らなければならないのか。
「他の所も空いてるじゃん。わざわざそこに座る必要はなくない?」
私は思ったことをそのまま口に、千晴の要求に首を振った。
しかしそこで素直に私の言葉を飲む千晴ではなかった。
「ここに座ることがメイドの仕事」
「はぁ?そんな仕事あるわけないでしょ?さすがに信じないわ」
淡々と変なことを言う千晴に、険しい顔になる。
いくら知らない世界でも、さすがにあんな雑な千晴の嘘には騙されない。
千晴は私の様子に、珍しく「わかった」と落ち込んだ様子で頷いた。
本当に珍しい千晴の姿に思わず拍子抜けする。
かなり説得しなければ、あるいは、そもそも説得は無理だと思っていたが、まさか私の話を聞き入れるとは。
珍しいこともあるものだ、と1人頷いていると、突然、視界がぐらりと揺れた。
確かについ先ほどまで千晴がいた私の視界には、もう千晴がいない。
代わりに、背中にその存在を感じた。
千晴は私の一瞬の隙をついて、強引に自分の足の間に私を座らせたのだ。
「ちょ、ちょちょちょ、はぁ!?」
急な展開に、思わず、叫んでしまう。
後ろにはしっかりとした千晴の体を感じ、妙に胸が騒がしくなった。
ふわりと千晴の甘い匂いが鼻をかすめ、すぐ真後ろにいる千晴の存在を意識せずにはいられない。
心臓がバクバクと騒ぎ、苦しい。
相手はただの後輩なのに、こんな密着しただけで、こうなってしまうとは。