推しに告白(嘘)されまして。




私は煩悩の塊なのか。
頬どころか、体全体が熱くなっている気がして、嫌になる。



「耳まで真っ赤じゃん。かーわい」

「なっ、だ、誰のせいだとっ」



楽しそうにからかう千晴の声に、私は弱々しく不満をぶつけた。
本当は強くいきたいが、どうもいつもの調子が出ない。
恥ずかしさで弱くなっている。

悔しくてぶるぶると震えていると、そんな私を千晴はぎゅう、と後ろから抱きしめた。



「…っ!」



突然のバックハグに驚きで目を見開く。
それから何と千晴は私の首元に顔を寄せた。

すんすんと、千晴が私の匂いを嗅ぐ、小さな息遣いが耳に入る。
後ろから抱きしめられて、首元の匂いまで嗅がれて、もう頭の中が真っ白だ。



「ち、ちは…」



もう勘弁してくれ、と訴えかけたところで、千晴は何と、私を離した。
もちろん、抱きしめることをやめただけで、未だに真後ろにいるわけだが。
千晴は私から離れると、ソファに置いてあった高級そうなふわっふわのクッションを私に渡してきた。



「それ、先輩が使って。いらなかったらその辺にでも置いてていいから」

「…はぁ」



千晴のまさかの気遣いに間の抜けた返事をしてしまう。
意外すぎた思いやりに驚いたと同時に、自分の置かれている状況も理解した。

千晴は今、このクッションのように私を抱き枕にしているのだ。

…人間を抱き枕にするな。

今すぐにでも文句を言おうと思ったのが、渡されたクッションがあまりにもふわふわでその思考はすぐにどこかへ行った。

布の触り心地、ふわふわの感触、全てが気持ちよく、私が普段触れているものとは、レベルが全然違うのだ。




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