推しに告白(嘘)されまして。
3.勘違いフィアンセ
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暖かく、肌触りの良い布団。
ふわふわのマットレスは極上で、まるで雲の上にでもいるかのようだ。
幸せなまどろみの中、私は気持ちよく眠っていた。
すると、その声は突然聞こえてきた。
「失礼します!」
「…っ!?」
凛とした声に驚いて、覚醒する。
ほ、本気で寝ていた!
まさかのしっかり取ってしまった睡眠に、慌てて体を起こそうとする。
…が、それは私を後ろから抱きしめる誰かによって、できなかった。
最高級ベッドの上で、誰かに抱かれて眠るこの奇妙な状況。
一体何故、こうなったのか。
私は眠る前の出来事を思い返した。
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千晴と映画鑑賞後、私たちは席を移動し、部屋に直接運ばれてきた昼食を共に取った。
とんでもないクオリティの超豪華昼食に最初こそ、おそるおそる食べていたが、すぐにその虜になり、完食したのは言うまでもない。
その後、千晴が私に一言。
「眠い」
それだけ言うと、千晴は天蓋付きのベッドへと、ぼすんっと倒れ込んだ。
程よく暖かい部屋に、時刻はお昼過ぎ。
ここには、昼食後、どうしても眠たくなる条件が、しっかり揃っているので、千晴の行動にも頷ける。
私も休日で自分の家なら、昼寝をしたい状況だ。
だが、ここにはバイトで来ている為、私はそんな千晴を横目に、広すぎる部屋をじっと見つめた。
これから私は何をすればいいのだろうか。
掃除か、それともパーティーの準備か。
整理整頓…はする必要はなさそうだ。
とりあえず、執事長の影井さんのところに行って指示を仰ぐべきかな…。
この家のメイドとして、何をすべきか考え、早速行動に移そうとする。
すると、ベッドで眠り始めたはずの千晴が、寝転んだまま、こちらを見た。
「何してるの?先輩も一緒に寝るんだよ?」
おかしなものでも見るような目でこちらを見て、「こっちおいで」と千晴が甘く囁く。
その姿に私は首を傾げた。