推しに告白(嘘)されまして。
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眠ってしまう前のことを思い出し、苦笑いを浮かべる。
つまり、私を後ろから抱きしめて離さない誰かとは、間違いなく、千晴なのだ。
「もう約束の時間なのに何寝ているの!?」
私を夢の世界から覚醒させた人物、千夏ちゃんは、「あり得ないわ!」と言いながら、何やら怒っている様子でこちらへと近づいてきた。
約束?一体何のことだろう?
千夏ちゃんの怒りの原因がわからず、私は首を捻る。
とりあえずこのままではいけないと思い、何とかベッドから出ようとした。
…したのだが。
「…んー!ち、千晴!離せぇ!」
私を抱きしめる千晴が、全くその手を緩めようとしない為、ベッドから出るどころか、起き上がることさえ叶わない。
こちらに来た千夏ちゃんに、「助けてください!」と切実に訴えると、千夏ちゃんはその美しい顔をほんの少し歪めて、ため息を吐いた。
「起きてください!お兄様!もうパーティーの支度の時間ですわ!」
凛とした綺麗な声が、この広すぎる部屋に響き渡る。
その声に千晴は「んん…」と小さく反応した。
「ん、千夏…。もうそんな時間?」
「ええ、そうです。女性の支度には時間が必要ですから」
「…ふぁ、そっか」
千夏ちゃんと千晴が、淡々と何やらよくわからない会話をしている。