推しに告白(嘘)されまして。



「アナタが着るドレスをそこら辺の既製品にするわけがないじゃない。アナタのサイズなんて当然知っているわ。スリーサイズも全部ね」

「…はぁ」



おかしなことを言うな、と言いたげな千夏ちゃんの視線に、小さく歯切れの悪い返事をする。
今、一番聞きたかった、何故、このようなことになっているのか、その理由が千夏ちゃんのセリフにはなかった。
私の伝え方が悪かったらしい。



「あのね、千夏ちゃん。その、この格好についでなんだけど…」



何とか今の状況を聞こうとしたが、それは周りにいたメイドたちによって、遮られてしまった。



「お化粧の準備が整いました。こちらへどうぞ、千夏様、柚子様」



礼儀正しく、お辞儀をし、にこやかにそう述べたメイドさんが、私と千夏ちゃんをまた別室へと案内する。
案内された部屋には、壁に設置された大きな鏡台がいくつもあり、その鏡の周りは白い電球で光輝いていた。
机の上には、植物が添えられており、落ち着いた雰囲気だ。

鏡台の前へと千夏ちゃんと座らされると、そのまま何と複数のメイドによるメイクが始まった。
どんどん変わっていく私の顔を見て、思う。

…何だこれ。



「待って待って待って」



流れるように始まった作業に、私は思わず、静止の声をあげた。
いくら何でも意味がわからなすぎる。
私の声に、メイドさんたちが戸惑いながらも、一度手を止める。


< 226 / 422 >

この作品をシェア

pagetop