推しに告白(嘘)されまして。
「柚子はどんな格好でも似合うね。今日の姿も綺麗だよ」
ずっと満足そうに私を見ていた千晴が、ふと、甘く笑う。
そんな千晴に私も口角をぎこちなくあげて微笑んだ。
「ア、アリガトウ、チハル」
慣れない演技に、つい棒読みになってしまう。
こんなことは初めてで、正直正解がわからない。
周りから見れば、仲睦まじい私たちの姿に、ホール内にいた人たちは、ざわめいた。
「華守の千晴様がついに婚約者を決めたとは本当だったのか」
「しかも噂通り、相当溺愛されているようですな」
「庶民の出らしいが、なるほど美しい。あれでは、惚れてしまわれるのも無理はない」
「しかし庶民とはいえ、かなりの才女だとか」
「さすが千晴様だ」
どこかの会長であろうオーラを放つ、80歳くらいの男性に、上品に微笑む貴婦人。
しっかりとした風格の50代くらいの男性は、どこからどう見ても、社長のようだし、かと思えば、華族のような雰囲気の男性や女性もいる。
とにかく上品で高貴な人々は、私と千晴をずっと様々な目で見ていた。
聞こえてくる雲の上の人たちの上品な噂話に、思わずため息が漏れそうになるが、それを私はぐっと堪えた。