推しに告白(嘘)されまして。
「なぁに、おにーさん」
男に俺は気だるげに笑う。
喧嘩を売りにきたのか、遊び相手として誘いにきたのか。
どれかはわからないが、どうせろくでもないことなのだろう。
「ちょっと、俺たちに付き合えよ?心当たりはあるだろ?」
軽く首を動かして、こっちに来い、と呼ぶ男の表情は笑顔だが、目は鋭かった。
どうやら、喧嘩を売りにきたみたいだ。
「いいよ。遊んであげる」
俺は不敵に笑い、その場から立った。
男の後ろには、10人ほど似たような男がおり、笑ってしまう。
群れなければ何もできない可哀想な人間だ。
男たちに連れられて、俺はそのままネオン街の奥へと進んでいった。
*****
ビルとビルの間。
ネオンの光でさえも入らない場所に連れて来られて、ああ、バカだな、と思った。
ここでなら、人目がないので、加減をしなくてもいい。
どんなにやっても、警察は来ない。
俺の後ろは行き止まりで逃げ場はない。
今日は楽しめそうだ。
ネオン街を後ろに、まるで俺を追い詰めるように行く手を阻む男たちに、俺は口角を上げた。
「何笑ってんだよ?」
最初に俺に話しかけてきた男が、不愉快そうに表情を歪める。
「俺の弟の友だちの連れをボコったんだろ?だったら今度はお前がボコられる番だよなぁ?」
その横にいた男は、ボキボキと指の骨を鳴らしながら、ニタニタと笑っていた。
「俺の彼女も寝取ったよなぁ?別れ話されてさぁ、何でか聞いたらお前が忘れられないってさぁ?」
「俺もそれだわ。彼女がお前じゃないとダメってさ」
「うちは妹。泣いてんだよ、お前が自分のものにならないって」
それからその場にいた男たちは口々に、俺に文句を言ってきた。