推しに告白(嘘)されまして。
笑えてしまう。
だからどうしたというのだ。
俺に喧嘩で負けて、ボコボコにされたのは、そいつが弱かったから。
俺に相手にされて、喜んだ女に振られたのは、お前の魅力がなかったから。
俺を自分だけのものにしたい、という欲望は知らない。そんなこと誰にもできるわけないのに、バカらしい。
張りつめた空気の中に、ピリッとした緊張感が走る。
誰かが動けば、喧嘩が始まる。
ーーーーその時だった。
「何してんのよ!」
男たちの後ろ、ギラギラと輝くネオン街から凛とした女の声が聞こえた。
突然聞こえた声に、男たちはざわざわとざわめき出す。
「だ、誰だ!?」
そして1人の男がそう声を上げた。
男たちの間から声の主の姿が見える。
ネオン街では見ない、きちんと着こなされた制服に、黒髪の綺麗なポニーテール。
気の強そうな瞳がこちらを睨みつけている。
まるで太陽のような光を放つ彼女は、薄暗いここでは、あまりにも異質すぎた。
何故か眩しく感じる存在につい瞳を細める。
「誰だ!?じゃない!1人に対して、10人でよってたかって、いい大人が何してんの!?恥ずかしくないわけ!?」
獰猛な肉食獣の檻に飛び込んできた、何も知らない子猫は、にゃあにゃあと威勢よく叫んで、こちらへとずんずんと近づいてきた。
すると、男たちは、そんな子猫をバカにしたように笑った。