推しに告白(嘘)されまして。
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それから彼女に一目でも会いたくて、あの制服を頼りに彼女を探した。
そしてわかったことは、彼女は鷹野高校の1年生で、鉄崎柚子、という名前だった。
「鉄崎柚子…」
自分の部屋でソファに座りながら、ポツリと彼女の名前を呟く。
大きな窓の向こうに登る月は、今日も明るく、あの日のことを思い出す。
街灯と月明かりの下で、怒り、笑う、彼女。
彼女との時間は、俺に色を与えてくれた。
鮮やかで眩しい時間。もう一度だけ、感じたい。
瞳を閉じて、また彼女に会いに行く。
現実でも、必ず、会う。
こうして俺は、進学先を、華守学園の高等部ではなく、鷹野高校へと変えたのだった。
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高校で再会した先輩は、俺のことを一切覚えていなかった。
きっと、俺のような存在をその平等さと優しさでたくさん救ってきたのだろう。
忘れられていてもいい。
また刻めばいいのだから。
他の救ってきた奴らとは、俺は違うのだ、と。
ずっと、会いたかった、眩しい存在が、今、俺の腕の中にいる。
高校に入って、関わるようになって、気がつけば、俺は先輩のことを好きになっていた。
いや、きっと最初から惹かれていた。
金髪を戻さないのも、校則違反をし続けるのも、先輩に俺を見て欲しいから。
こうしていれば、人混みの中からいつでも先輩は俺を見つけてくれるし、叱ってくれる。
先輩が俺をまっすぐと見据える度に、俺の鼓動は高鳴った。
素行が悪いのも、人を寄せ付けないようにしているのも、全部全部、先輩に構ってもらうため。
この人は、誰にでも平等に優しくて、正義の人。
きっと、こんな俺を放っておかない。
好き、好き、大好き。
俺の腕の中に収まる先輩に、愛しさが溢れて、止まらない。
その思いの丈をぶつけるように、先輩の頭に自分の頭をくっつけ、ぐりぐりとした。
「…」
それでも、先輩は文句一つ言わずに、俺を抱きしめ続ける。
俺にはこの人しかいない。
だから絶対俺のものにする。
今はアイツが先輩の恋人だけど、最後には絶対、俺が旦那として、隣にいるから。
恋人になる、という初めてだけは、アイツにあげる。
けれど、あとは全部俺のものだ。