推しに告白(嘘)されまして。
2.最強の姉妹
…お姫様。
聞こえてきた可愛らしい声に、思わず笑みが溢れる。
どうやらこの会場に、女の子から〝お姫様〟と呼ばれている可愛らしい人がいるらしい。
何だかその存在自体が可愛らしくて、ほわほわした気持ちになっていると、私の横に5歳くらいの可愛らしい女の子が現れた。
「こんにちは!お兄ちゃんのお姫様!」
「…え」
綺麗で柔らかそうな黒色の髪を後ろで一つに結び、大きなピンクのリボンを付けている女の子が、私の顔を笑顔で覗く。
大きなくりくりの瞳が特徴的な整った顔立ちの女の子は、間違いなく私に挨拶をしていた。
全く見覚えのない女の子に思わず首を傾げる。
私の知り合いにこんなにも愛らしい女の子はいない。
それに私はこの女の子のお兄ちゃんのお姫様ではない。
きっと人違いだろう。
だが、だからといって無視するのは違う。
私は真横にいる女の子が誰だかわからなかったが、意識して口角を上げた。
「こ、こんにちは」
上手く笑えていない気もするが、無視せず応えたことに意味がある。
「ちょ、里緒!」
ぎこちない笑みを浮かべ続けていると、もう1人、誰かがこの場に現れた。
女の子の横に現れた女性は、この状況にとても焦っていた。
綺麗に巻かれた黒髪にかきあげられた前髪。
大人っぽいこの女性は20代前半くらいだろうか。
女の子とどこか雰囲気が似ており、パッと見で、姉妹なのだろう、と察せた。
それと同時に、お姉さんから何故か、私の推しである悠里くんの面影も感じた。