推しに告白(嘘)されまして。




「ごめんね、急に。アナタ、柚子ちゃんよね?うちの悠里の彼女の」

「…え、あ、はい」



お姉さんに確認されて、戸惑いながらもこくりと頷く。

うちの、悠里…?

お姉さんの言葉に、私の頭はフル回転し始めた。

悠里くんの面影を感じる、こちらのお姉様。
悠里くんのことを〝うちの悠里〟呼び。

…これは間違いなく、紛れもなく、目の前にいらっしゃる美人さんは、悠里くんのお姉様なのでは?
つまり、この小さな愛らしい女の子は…。



「私、悠里の姉の里奈。大学生。で、こっちの小さいのが…」

「里緒!5歳!」



笑顔のお姉さんの横で、悠里くんの妹さん、里緒ちゃんが勢いよく、5本の指を私に見せる。



「…」



突然の推しのご姉妹ご登場に、私は頭が真っ白になった。

本物の推しのご姉妹にお会いする日が来るとは。
悠里くんには、お姉さんと妹さんがいたとは。
姉妹に囲まれていたとは。

固まって黙ってしまった私に、悠里くんのお姉さん、里奈さんが「おーい。大丈夫?」と目の前で軽く手を振ってくれる。
私はその美しい姿に、ハッと我に返り、頭を下げた。



「ゆ、悠里くんとお付き合いをさせていただいております!鉄崎柚子と申します!」



推しの家族に失礼があってはならない!と、慌てる私に里奈さんが優しく笑う。
その顔があまりにも悠里くんに似ていて、思わず感嘆の息が漏れそうになった。
遺伝子がお強すぎる。



「知ってる知ってる。うちの悠里がいつもお世話になってます」

「ます!」



クスクスと笑う里奈さんの隣で、笑顔で同じ言葉を繰り返した里緒ちゃんに、胸がきゅーんっと締め付けられる。
何て愛らしくて最強の姉妹なんだ。




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