推しに告白(嘘)されまして。
「里緒の言う通りだよ!アイツ、絶対柚子ちゃんに会いたいって!むしろ、会ってあげてよ!その方が何倍も力出るから!」
「…え、えぇ?」
美しく、可愛い、最強の姉妹から念を押されて、だじたじになる。
ほ、本当かな…。
けど、悠里くんのことを私よりも遥かに知っているお二人が言っていることだし…。
「会ってくれますかね?」
「むしろ会いたがるって」
弱々しく里奈さんを見れば、里奈さんはそんな私に力強く頷いた。
そしてその後も私たちの問答は続いた。
「邪魔とかには…」
「ならない、ならない」
「気を使わせるかも…」
「そんなことより、柚子ちゃんに会えた喜びの方が勝つって」
里奈さんの言葉の後に、里緒ちゃんも、「うん。ならない」や、「勝つ勝つ」と、お姉ちゃんの真似をしている。
「さっき、サブの体育館で、アップしてたし、顔だけでも見せに行こ」
「…は、はい」
微笑む里奈さんに、私はいつの間にか頷いていた。
ごめんなさい。悠里くん。
私は欲望に負けました。
本当ならここで強く、「推しのことを第一に考え、断腸の思いで、悠里くんと会うことを諦めます」と言わなければならなかった。
けれど、私にはそれができなかった。
やはりこの目で、晴れ舞台に立つ前の推しを見たい。
あわよくば、挨拶くらいしたい。