推しに告白(嘘)されまして。
申し訳なさとこれから推しに会えるウキウキで、わけのわからない状態になりながらも、里奈さんと里緒ちゃんとサブ体育館を目指す。
そしてその扉がちょうど見えたところで、そこから鷹野高校バスケ部が現れた。
この日まで勝ち抜いてきた強豪校らしいオーラをまとう選手たち。
全員同じ赤と黒の特注の鷹野高校ジャージを着ており、普段の彼らとはどこか違う雰囲気がある。
そんな強そうな数十人の選手たちの中に、明らかに一人だけ輝きを放つ存在がいた。
歩くたびに揺れるサラサラの黒髪。
そこから覗く整った爽やかな顔立ち。
いつもの柔らかな表情とは違い、試合前の真剣な表情。
私は選手たちの中からいとも簡単に推しである悠里くんの姿を見つけていた。
み、見れた。推しの姿をこんなにも近くで…!
真剣な表情、かっこよすぎる!!!
悠里くん登場に自然と口元が緩む。
先ほどの葛藤が嘘かのように心の中で舞い上がっていたーーその時。
バチっと悠里くんと目が合った。
それから真剣さで溢れていたその瞳は、私と目が合ったことによって、ふっと柔らかいものへと変わった。
…す、好きぃ!
推しの尊さに体温が一気に上昇する。
すると私の視界を支配する悠里くんは、何やら周りにいた部員たちと二、三言交わし、そのまま迷いなくこちらへと駆け寄ってきてくれた。
そんな悠里くんの後ろには、恐怖に慄いているバスケ部員たちがいる。
もちろん、私の姿を見つけて。
「て、鉄子が何でここに…」
「ま、まさか、バスケ部の活動の偵察に?」
「部費に関する何かじゃないか!?」
私を認識する少し前まで確かにあった強豪校オーラがすっかり消え、普通の男子高校生のように、右往左往している部員たち。
いつもと変わらぬ彼らを横目に、私は推しをまっすぐと見た。
「柚子、来てくれたんだ」
私のところまで来てくれた悠里くんが嬉しそうに瞳を細め、柔らかく笑う。
…が、その表情はある場所を見て、気まずそうなものへと変わった。
悠里くんの視線の先、私の横には、面白そうにニヤニヤしている里奈さんがいた。