推しに告白(嘘)されまして。
「あのね、あのね、柚子ちゃん。お兄ちゃんはね、お姫様の柚子ちゃんのことがとっても大好きなんだよ。いつもお姉ちゃんに柚子ちゃんのお話してるの。えっとねぇ、この前はねぇ、どうやったら柚子ちゃんが喜ぶかお話ししててぇ…。あと、柚子ちゃんが忙しいそうで、心配とかぁ…」
里奈さんと悠里くんのやり取りを見ていると、里緒ちゃんがキラキラとした目でこちらに話しかけてきた。
そのとんでもないお話内容に心臓が一瞬止まりそうになる。
お、推しが、私のことを心配して、ご家族にまで話しているのか?
だからご家族には、私=悠里くんの大好きな彼女だと思っているのか?
尊すぎないか?
「お兄ちゃんね、柚子ちゃんが可愛すぎてしんどいって言っててね。なんで可愛いとしんどいのか、わたし、聞いてみたんだけど…」
未だに話し続ける里緒ちゃんに、もう私のHPは限界に近い。おそらくあと5秒後に倒れる。
死因は〝尊死〟と、今まさに意識を手放さそうとしていると、里奈さんがその形の良い口の端を上げた。
「里緒ぉー。そのくらいにしといてあげなぁ?王子様、限界みたい」
里奈さんの視線に釣られて、王子様と呼ばれた悠里くんの方を見れば、悠里くんの顔は真っ赤で。
推しの赤面にズキューンっとまた心臓を射抜かれた。
か、可愛いがすぎる。
この可愛さは世界を救う。
いや、逆に破滅させるかも。
「も、もういいからっ!2人とも、応援来てくれてありがとう!先上がってて!」
半ばヤケクソになりながらそう言った悠里くんに、里奈さんはおかしそうに笑い、里緒ちゃんは何もわかっていない様子で明るく笑った。
尊い家族に私は心の中で合掌した。
ありがとう、世界。
この世にこんなにも尊い家族を生み出してくれて。