推しに告白(嘘)されまして。




里奈さんと里緒ちゃんが先に2階の応援席へと上がったことによって、悠里くんと私は2人になった。



「素敵なお姉さんと妹さんだね」



2人を見送った後、悠里くんへと視線を戻す。
すると、悠里くんは照れくさそうにはにかんだ。



「…うん。妹の里緒はかわいいよ」



そこで、一度悠里くんは言葉を区切る。



「まぁ、姉ちゃんはちょっとあれだけど」



それから今度は困ったように笑った。

柔らかい悠里くんの表情に、2人のことが大切で好きな気持ちが伝わる。
美しい家族愛というやつだ。

「2人のことが大好きなんだね」と思ったことそのまま伝えると、悠里くんは何も言わずに微笑んだ。
そのまま、私たちはいつもの調子で、他愛のない会話を始めた。



「…今日は来てくれてありがとう。応援来てくれて嬉しい。姉ちゃんたちと一緒に来た時は知らなかったから驚いたよ」

「やっぱり、悠里くんの勇姿は直接見たかったしね。試合頑張って」



嬉しそうに笑い、瞳を細める悠里くんに私は力強く頷く。

何のために今まで、悠里くんの形だけ彼女をしてきたと思うのだ。
私は悠里くんがバスケに専念する為の壁だ。
今日はそのバスケの集大成の日でもある。
是が非でも、直接その成果をこの目でみたいに決まっている。
もちろん、おいしい思いをするために、悠里くんの彼女になっているというのもあるのだが。



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