推しに告白(嘘)されまして。
4.大切な人 side悠里
side悠里
「悠里!」
柚子と別れた後、選手控え室に戻ると、その場にいた部員たちが一斉に俺に詰め寄ってきた。
「何でここに鉄子がいたんだ!?」
まずは大きな声で問い詰めてきたのは、隆太だ。
隆太の顔色はあまりにも悪く、とてもじゃないが、柚子を歓迎しているようには見えなかった。
「偵察か?やっぱり、部費関係の偵察なのか?」
それから続くように他の部員もあまりよくない顔色でこちらを見る。
「悠里、鉄子はバスケ部について何か言ってたか?」
さらに先輩までも顔面蒼白で汗を流していた。
先ほどのアップで流したものではなく、確実に〝柚子〟
という存在に流した冷や汗だろう。
緊張と恐怖で右往左往する部員たちに、俺は困ったように笑った。
「落ち着いて、みんな。柚子は普通に応援に来ただけだから」
俺の言葉に一瞬、控え室が静まり返る。
だが、それはほんの一瞬ですぐに先ほどの賑やかさを取り戻した。
「な、何だぁ、そうかぁ」
「よ、よかった。ほんとーに。よかった」
隆太や先輩、みんなが安堵の息を漏らし、笑顔になる。
その中で陽平はこちらに近づき、からかうように口角を上げた。