推しに告白(嘘)されまして。
「アツアツじゃん。もう立派なおしどりカップルだな」
陽平の言葉に部員たちは一斉に笑顔で「確かに!」と言う。
この場にいる全員がまるで自分のことのように嬉しそうにしている姿に、俺は胸がじーんと暖かくなった。
そんな俺に後輩である慎も、嬉しそうに明るい声を出した。
「本当、お二人とも遠目から見てもめっちゃいい雰囲気でした!」
慎の言葉に、ふと、先ほどの柚子の姿を思い出す。
俺を見つめる可愛らしい瞳。
揺れる綺麗な黒髪から見える顔は、忙しなく表情を変え、愛らしい。
わざわざここまで観に来てくれたことも、俺に会いたくて、あそこまで来てくれたことも、全部が全部可愛い。
柚子のおかげで頑張れる。かっこいいところを見せたい。
「ぜってぇ、勝つぞ!鉄子に悠里の活躍を見せつけるんだ!」
「惚れさせようぜ!俺たちの王子様によ!」
「打倒!白銀学園!アツアツ!鉄子と悠里!」
盛り上がる部員たちの横で、俺も静かに闘志を燃やす。
ーーー絶対、勝つ。
グッと右手を握り締め、見つめ、瞳を閉じる。
それから大きく深呼吸して、再び瞳を開ける。
その時、ちょうど控え室に監督が現れた。
何やら熱気を帯びた控え室に監督は「やる気十分だな」としたり顔で笑う。
ほんの少しだけ違うやる気なのだが、そこまではさすがに気づいていない様子だ。
「よぉーし!お前たち!今日勝ったら、ベスト8だ!気合い入れていくぞ!」
「「おぉ!!!!」」
パァァン、と両手を叩き、力強くそう言った監督に、部員たちは同じように力強く返事をしたのだった。