推しに告白(嘘)されまして。
「柚子!」
会いたかった背中に、つい声が上ずる。
その瞬間、「きゃー!」と黄色い歓声が上がった。
そしてその場にいた女の人たち全員の熱い視線が、俺に注がれた。
「さ、沢村悠里くんだぁ!かっこいいぃ!」
熱い視線の中から、高校生くらいの女の子が、まるでアイドルでも見ているかのような反応を示す。
「王子と柚子さん、お似合いだね…」
また他の大学生くらいの女の人は、どこか悟りを開いたかのような暖かい目で、こちらを見つめていた。
バスケに専念する為とはいえ、柚子と付き合って、約4ヶ月。
柚子と俺の姿をいろいろな形で静かに見守っていた、俺を好いている人たちは、いつの間にか、柚子と俺を陰ながら応援する存在へと変わっていた。
憧れや温もり、好意の視線を向けられながらも、俺は柚子の元へと向かう。
俺の声に反応し、振り向いた柚子は、まだその大きな瞳に涙を溢れさせ、鼻と頬を赤くしていた。
「ゆ、悠里くん」
俺を見つけた柚子が慌てて目をこする。
それでもその涙は簡単には止まらず、柚子の頬を濡らし続けた。
「か、勝ったね…悠里くん。すごかった、本当に…おめでとう」
流れる涙を抑えながらも、柚子は精一杯、言葉を紡ぐ。
その姿があまりにも愛おしくて、俺は思わず柚子の傍まで寄り、指先でその涙を拭った。