推しに告白(嘘)されまして。




「柚子が来てくれたから頑張れたんだよ。ありがとう、柚子」

「ふぇ…」



真剣な眼差しで柚子を見つめる俺に、柚子はさらに頬を赤くする。

ーーーああ、何て愛らしいのだろうか。

そんな柚子があまりにも愛らしくて、胸がぎゅうっと締め付けられた。

今すぐ、この手の中に入れてしまいたい。
けれど、ここには人の目がありすぎる。
それに、試合後すぐに来た今の状況では、とてもじゃないが、柚子を抱きしめることなんてできない。
汗をかきすぎている俺なんかに抱きしめられたら、きっと柚子も不快だろう。

1人でそんな葛藤をしていると、柚子越しに、里緒と姉ちゃんの姿が目に入った。

里緒がキラキラと期待に満ちた目で、姉ちゃんがニヤニヤと意味深な目で、こちらを見ている。
2人の視線に、俺の葛藤はあっという間に消えた。

…今はその時ではなかった。



「悠里くん、本当にかっこよかったよ。プレー、一つ一つが輝いてて、エースとしてチームの中心で大活躍してて。感動した。こんな素敵な人を少しでも支えられている自分が誇らしいよ」



やっと先ほどまで流れていた涙を止め、清々しく笑う柚子の言葉は、どれも柔らかく、暖かく、俺の心をどんどん満たしていく。

嬉しさでいっぱいになる。
こんなにもまっすぐ思われて、嬉しくならないわけがない。


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