推しに告白(嘘)されまして。

2.推しとのデート





side柚子


PM:12:00。
私、鉄崎柚子は推しとのデートの集合場所である駅前に、集合時間の約1時間前から推しこと、沢村くんのことを待っていた。

何故1時間も前から集合場所へ来ているのか。
理由は簡単だ。推しである沢村くんの大切な時間を一分一秒でも無駄にしたくないからだ。

きっと真面目で優しい沢村くんなら、約束の15分前にはここへ来るだろう。
ならば、私も15分前に…と思うところだが、それだとタイミングによっては沢村くんが数分私を待つ状況になりかねない。
そうならない為にも、沢村くんが来るであろう15分前のさらに15分前にここへ来るべきだ。つまり約束の30分前だ。それならば沢村くんを絶対に待たせるという失態は犯さないだろう。

だが、しかしそれでもまだダメだ。
ここへ来る前に何かハプニングに遭遇する可能性だって大いにあるのだ。
電車が遅延するかもしれない。困っている人を助けるかもしれない。全部信号が赤かもしれない。
街には遅れる要因がたくさんある。

それらのことを全て配慮した結果、私は約束の1時間前には駅前につくようにした。
これでもう完璧だ。

沢村くんと付き合い始めて最初の日曜日。
まさかもう沢村くんとデートができるとは思わず、私は浮かれに浮かれまくっていた。

沢村くんの隣にいても恥ずかしくないように、また、あわよくば可愛いと思ってもらえるように今日の私には気合いしか入っていない。
いつもは後ろで一つに結んでいる胸の上まである黒髪も今日はおろして緩く巻いており、服装も白に小さな黒いハートが散りばめられたマーメイドワンピースと可愛らしく仕上げてきた。
メイクも軽くしており、私の装備は完璧である。

もちろんこういうことには疎いので、全て雪乃にやってもらった。
清楚系小悪魔モテ美少女に感謝だ。

今日は今ハマりにハマっている運命diaryの実写映画を沢村くんと観に行く。
映画を観ることも楽しみだし、休日の推しを見られるのも楽しみだし、もう楽しみしかない。
ここで推しを想いながら1時間待つことも全く苦ではない。




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