推しに告白(嘘)されまして。




「これ、そこで鉄崎先輩から預かりました。なんか監督からみたいで」



慎がたまたま扉の近くにいた陽平に、抱えていた茶封筒を渡す。
陽平はそれを目を丸くして受け取った。



「そこ?」



ぱちぱちと大きくまばたきをする陽平に、部員たちもざわつき始める。



「慎のやつ、そこって言ったか?」

「そこってどこだ?」

「てか、鉄崎先輩、て言ったよな?鉄崎先輩って、て、鉄子であってるよな?」



それぞれが顔を見合わせて、慎の言葉を確認し合う。
その中で俺は頭を真っ白にしていた。

先ほどと同じように賑やかなはずの部室内が、やけに静かに思える。
誰の言葉も耳に入ってこない。



「…慎。そこってどこ?」



ざわつく部員たちの中で、陽平は冷や汗を浮かべながらも、冷静に慎にそう問いかけた。



「え?部室の前ですけど…」

「い、いつから!いつからいたかわかるか!?」



部員たちの反応に戸惑う慎に、今度は隆太が俺から離れて食い気味に質問する。
すると、慎は首を傾げてこう答えた。



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