推しに告白(嘘)されまして。
「違わないよ。悪いのは私だから。悠里くんは本当は私にフラれて、私のことなんて気にせずにバスケに集中できるはずだったんだよ。けど、その機会を私が奪ったの。悠里くんは優しいから、例え嘘でもずっと真剣に私に向き合ってくれたよね」
柚子が本当に申し訳なさそうに俺から一瞬、視線を逸らす。
悪いのは自分だと、自分を責める柚子の言葉を否定したくて仕方ないのだが、その隙を柚子は未だに俺に与えてくれない。
「嘘だったとしても、悠里くんは思いやりがあって、優しくて、完璧な私の彼氏でいてくれた。それが私はどんなに嬉しかったか…。私、例え嘘でもよかったの。悠里くんの為に彼女として壁になれることが嬉しかった。バスケを頑張る悠里くんを少しでも支えられている自分が誇らしかったの」
ふわりと笑う柚子は本当に嬉しそうで。
柚子の言葉に俺は、ウィンターカップの時に柚子に言われたある言葉を思い出した。
『こんな素敵な人を少しでも支えられている自分が誇らしいよ』
そう柚子は言っていた。
あの時は何も思わなかったが、今ならこの言葉の意味をきちんと理解できる。
少なくともあの時には柚子は知っていたのだ。
俺の告白が嘘だったということを。
「…別れよう、悠里くん」
柚子の口から聞きたくなかった言葉がゆっくりと紡がれる。
言われるだろうと覚悟はしていたが、やはり直接言われると、頭が真っ白になった。
暗い感情が俺を支配して、苦しくて苦しくて、息の仕方がわからなくなる。
だが、そんな俺に気づいていないのか、柚子は悲しそうに笑いながらも続けた。