推しに告白(嘘)されまして。
「別れたくない。このままがいい」
「う、うん!わ、私も!」
切実にそう訴えた俺に、柚子が嬉しそうに笑う。
その表情に俺は、ああ、と腑に落ちた。
柚子には、やはり、俺と同じ葛藤や飢えはない。
柚子は気づいていないのだ。
俺に向ける自分の感情が、恋などではなく、ただの憧れだということを。
「…」
俺の気など知らずに、花のように笑う柚子に、仄暗い感情が広がる。
ーーー気づいていないのならば、気づかせなければいい。
俺に向ける憧れの感情こそが、恋なのだと錯覚させ続ければいい。
「ふふ、へへへ」
楽しそうに口元を緩ませる愛らしい柚子の頬に、優しく触れてみる。
すると、柚子は目を丸くした。
どんな表情でも、可愛いなんて反則だ。
大丈夫。俺ならできる。
柚子に望まれて、彼氏の座にいるのは俺なのだから。
別れさえしなければ大丈夫だ。
「…好きだよ、柚子」
俺は愛おしい存在にそっと唇を重ねた。
この自身の中で渦巻く仄暗い感情に身を委ねて。