推しに告白(嘘)されまして。




そうこうしているうちに私たちの待ち番号がカウンターにあるスクリーンに表示された。



「行こう、鉄崎さん」

「え、ええ?でもまだお金が…あ、ま、待って!」



さっさと私に背を向けて、カウンターへと歩き出した沢村くんの背中を私は慌てて追いかける。
私の分のポップコーンたちまで推しに持たせる訳にはいかない。
とりあえずチケット代はまた後で払おう。

こうしてポップコーンやジュースをカウンターで受け取った私たちはついに劇場内へと入った。

劇場入り口で案内されたシアターへ向けて、私たちは廊下内を進む。
するとその廊下内で座り込んで泣いている5歳くらいの女の子の姿を見つけた。



「うぅ、ゔぅ…ぐすんっ」



泣き続けている女の子の周りにはポップコーンが散乱しており、保護者らしき人が1人もいない。
私は気がつけばその子の元まで駆け寄っていた。



「どうしたの?」

「うぅ、あ、うぅ…」



女の子と視線を合わせるようにその場にしゃがみ、女の子の顔を覗き込む。
女の子は私と目が合うと、何か言いたげに口を開いたが、泣きすぎてうまく喋れないようだった。



「大丈夫、ゆっくりでいいよ」



そんな女の子の背中をいつの間にか私と同じようにしゃがんでいた沢村くんが優しく撫でる。

さすが私の推し。
誰にでも優しく当然のように手を差し伸べられる素晴らしい人だ。

沢村くんの素晴らしすぎる姿に感心しながらも私は沢村くんと一緒に女の子が落ち着くのを待った。




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