推しに告白(嘘)されまして。
「私、壊滅的に料理ができないの!お父さんに三途の川を見せたことがあるの!そんな私が千夏ちゃんとチョコ作りだなんて、確実に邪魔だし、絶対迷惑だから…!」
『ふ、アナタが料理が苦手だということは、アナタについて調べた時に把握済みよ?華守を舐めないでくれる?』
「…っ!」
そんなことまで調べてたの!?
誇らしげに笑う千夏ちゃんに私は驚きすぎて、目を見開いた。
文化祭前に千夏ちゃんが、私が千晴に相応しいかどうか見極めるために、いろいろしていたことは知っていたが、まさか料理の腕の有無まで調べられていたとは…。
「何それ。先輩について調べてたの?千夏」
千夏ちゃんのすごさに思わず唖然としていると、スマホを持つ千晴が無表情のまま、その綺麗な瞳をぱちぱちさせた。
『ええ。華守の奥方になるお方ですからね』
「どこまで調べたの?」
『あらゆること全てですわ』
「スリーサイズとかも?」
『ええ。もちろん。そのおかげでクリスマスのドレスも準備できましたから』
「ふーん。あとで全部教えて」
『わかりましたわ』
驚いている私を他所に、どんどんマイペース兄妹が話を進めていく。
最初は呆然とそれを見ていた私だったが、とんでもないことが決定されたところで、私は声を上げた。
「お、教えなくてもいいです!」
さすがに全てを知られるのは恥ずかしい。
必死で画面に映る千夏ちゃんにブンブンと手を振り、「やめてくれ!」と訴える。
しかし、千夏ちゃんは『何故?夫婦になるのだからいいでしょう?何が恥ずかしいのかしら?』と本当に不思議そうに首を傾げており、私の訴えなど、聞き入れようとはしなかった。
千夏ちゃんの感覚が全くわからない。
恐ろしい。
『それよりお義姉様!わたくしがいるからにはもう大丈夫よ!華守に相応しい、最高のバレンタインチョコを作るわよ!』
スマホの画面いっぱいに、どこか嬉しそうな千夏ちゃんが映る。
そんな千夏ちゃんに「いや…」と断りを入れることなど私にはできず、私はついに頷いた。
ああ、未来の千夏ちゃんごめんなさい。
きっと千夏ちゃんはまともなチョコを作れません。
全て私のせいで。