推しに告白(嘘)されまして。
3.勘違いは続く
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2月13日、日曜日、バレンタイン前日。
私は千夏ちゃんとバレンタインチョコを作るために、午後から千晴の家へとお邪魔していた。
毎度の如く、あのご立派すぎるリムジンの送迎付きで。
しかも我が家のインターホンを押したのは何故か千晴で、お母さんが「千晴くんいらっしゃあい」と、もう千晴のことを覚えてしまっていた。
…なんと私の彼氏として。
もちろん、訂正したかったし、しようともしたが、あれよあれよという間にリムジンに乗せられた為、また訂正することができなかった。
もうずっとお母さんの中では千晴が私の彼氏である。
とんでもない勘違いだ。
冬休みも来た人が住んでいる家とは思えない豪邸の廊下を歩きながら私は先ほどのことを思い返し、「…はぁ」と小さく息を吐く。
するとそんな私を隣で見ていたらしい千晴が無表情ながらも、不思議そうに首を傾げた。
「まだ何もしてないじゃん。もう疲れたの?先輩?」
「…それアンタが言うか」
この疲れの最大の原因である千晴をギロリと睨みつける。
嵐のように我が家にやって来て、「俺が先輩の彼氏です」といった振る舞いをお母さんにし、それを慌てて訂正するも、できないようにしている千晴にどれだけ振り回されていたことか。
それをコイツはまるで何も知らない子犬のような目で見やがって…。
何か一言物申してやろうと、口を開けたが、私の口から言葉が出ることはなかった。
「到着いたしました。千晴様、柚子様」
執事の影井さんがそう言って、ある扉の前で止まったからだ。
執事服をきちんと着こなしている影井さんは、今日もとても落ち着いた由緒正しい厳かな雰囲気を身にまとっており、豪邸の玄関からここまで私たちを案内してくれていた。
そんな影井さんの手によって、扉がゆっくりと開けられる。