推しに告白(嘘)されまして。
「うん。そうだね」
そしてそう言い切って、私は何となく、千晴を見た。
私の視線の先にいた千晴は、やはりここには似つかわしくない豪華な椅子に優雅に腰掛けており、自分の話をされているにも関わらず、我関せずな表情を浮かべて、こちらをじっと見ていた。
そう、私はあのただの後輩である千晴を異性として全く好きではない。
案外周りをよく見ているところとか、その上でどのように行動すべきかわかっているところとか、普段は見せないが優しいところとか、誰かに流されない芯のあるところとか、千晴の人間としていいところを私はたくさん知っている。
けれど、それだけで。
それだけなはずなのに。
千晴のことを考えると、何故か胸の奥がぎゅう、と締め付けられるような感覚がした。
心臓も徐々に加速している。
どうやら先ほどの緊張状態が現在も続いているようだ。
急に黙ってしまった私を見て、千夏ちゃんは意味深に笑った。
「ほらほらぁ。やっぱり、お兄様のことが好きなんでしょう?早く素直になりなさいよ?」
「ち、違う。私にはそんな感情一ミリも…」
どこか嬉しそうな千夏ちゃんの言葉を何とか否定しようとする。
だが、それはこの部屋にいたもう1人の人物、千晴によって、遮られた。
「えー。本当に一ミリもないの?先輩?」
少しだけ頬を膨らませて、物欲しげにこちらをじっと見つめる千晴。
吸い込まれそうなその瞳に私は頭を抱えた。
ここで千晴までこの話題に入ってきたら収拾がつかなくなるではないか。
「照れているわね、これは」
ふふ、と勝ち誇ったように笑う千夏ちゃんに、
「先輩、照れてるの?かわいい」
と、その瞳を何故か嬉しそうに細める千晴。
マイペースで唯我独尊な2人に、私はさらに頭を抱えた。
…ま、まずは、何から正せばいいんだ。