推しに告白(嘘)されまして。
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マイペースな兄妹に頭を悩まされながらもバレンタインチョコ作りは始まった。
今日は生チョコタルトを作るらしい。
「これなら難しくないし、お義姉様も作れるはずよ。まずは材料を計りましょう」
千夏ちゃんは笑顔でそれだけ言うと、手際よく真ん中にあるテーブルに必要な材料を置き始めた。
バターに、砂糖に、多分小麦粉に、謎の粉に、小瓶に入った謎の液体。
電子はかりに、ボウル、ゴムベラ、泡立て器。
千夏ちゃんがどんどん出す必要なものを私は慌てて、受け取り、一緒に準備を進めていく。
いろいろなものが並べられたところで、千夏ちゃんはやっとその動きを止めた。
「必要なものはざっとこんなものかしら。次は計量ね。お義姉様、計量をお願いできるかしら?」
「う、うん」
千夏ちゃんに頼まれて、私は神妙な顔で頷く。
そんな私に千夏ちゃんは「ではこれを」と、タブレットを渡してきた。
「それにはレシピを入れているわ。材料を見て、計量をお願い」
「わ、わかった」
ここでメモ用紙ではなく、タブレットごと私に渡すとは、金持ちはスケールが違うな…と、感心しながらも、早速タブレットを開く。
すると液晶画面いっぱいに、生チョコタルトの写真と、レシピが映し出された。
私に与えられた仕事は材料を計量すること。
その為に液晶に触れ、軽くスライドさせて、材料欄を見る。
まずはバターを60g…。
電子はかりにボウルを置き、きちんと数字をゼロにしたところで、私は慎重にバターを乗せた。
計量は料理の中でも特に大事な作業だ。
ここを間違えてしまえば、全てが台無しになってしまう。
寸分の狂いもないように、作業を続け、できたものを千夏ちゃんが混ぜる。
それを繰り返すこと、数分。
千夏ちゃんからついに私では絶対にできない指示がきた。