推しに告白(嘘)されまして。




「お義姉様、次は卵を割って、卵黄と卵白に分けてください」

「え」



淡々と出された千夏ちゃんからの指示に一瞬固まってしまう。
だが、固まっていては何も始まらないので、私は非常に申し訳なさそうに口を開いた。



「ご、ごめん、千夏ちゃん。私、それはできない…というか、めちゃくちゃになる未来しかない見えないというか…」

「え?いくら料理が苦手なお姉様でもそのくらいはできるでしょう?大丈夫よ、少しの失敗ならわたくし気にしませんことよ?」

「す、少しかなぁ…」

「失敗は成功の元!よ!」

「う、うん…」



千夏ちゃんの勢いに押されて、千夏ちゃんからつい卵を受け取ってしまう。
仕方ないので私はその卵を割ってみることにした。

千夏ちゃんの言う通りかもしれない。
失敗は成功の元。やらなければ始まらない。
案外卵くらいなら綺麗に割れるかもしれない。

緊張で震える手で卵を優しく掴み、私はボウルの端に早速、卵をコツンと当ててみた。
しかし、卵には何の変化もない。



「…」



それでも私は黙ったまま、こんこん、こんこん、と卵を当て続けた。
いつも料理で失敗するのは、力加減がうまくできないからだ。
とにかくまずは弱めでいき、様子を見て強くしていけば、卵を破壊することもないだろう。

そう思い、慎重にこんこんし続けていると、いつの間にか、自分の作業を終えたらしい千夏ちゃんが怪訝そうにこちらを見た。



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