推しに告白(嘘)されまして。
4.雅な遊戯
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千夏ちゃんの手によって手際よく混ぜられた生地。
それをお情けで私が冷蔵庫へと入れたところで、生チョコタルト作りは一旦、中断となった。
ここから約1時間ほど冷蔵庫で生地を寝かせるらしい。
この約1時間、私たちは特に何もすることがない。
そこで何か暇を潰そうと千夏ちゃんから出された案が、軽く楽器を触る、だった。
何と雅な暇つぶしなのだろうか。
そう思いながらも、豪邸内を移動し、やってきたのは、シックでおしゃれな雰囲気の楽器専用の部屋だった。
部屋の中心にはL字の大きなソファがあり、その前にはテーブルがある。
壁際には、学校で見るものよりも大きなピアノがあり、大きな棚には飾るように、ヴァイオリンやフルート、見たことのない楽器などが飾られていた。
目に映るもの全てが洗練された美しさのある高級品で、圧倒されてしまう。
お金持ち、すごい。
ぱちぱちと何度もまばたきをしながら立ち尽くしていると、私の視界にヴァイオリンを持つ千夏ちゃんが入った。
ここに来るまでに千夏ちゃんから聞いた話だが、千夏ちゃんは幼少期から現在まで、プロの方も指導している先生からヴァイオリンを習っているらしい。
しかも千夏ちゃんはさまざまな賞を受賞している実力者で、海外でもその腕を披露する機会があるのだとか。
そんなすごい千夏ちゃんは慣れた手つきで、ヴァイオリンの弦をゆっくりと弾き始めた。
千夏ちゃんの複雑な動きと共に、凛とした美しい音色が部屋中に広がる。
「…!」
聞こえてきた美しい旋律に私は感動し、一度目を見開くと、静かに聴き入るようにその瞳を閉じた。
音楽の良し悪しは残念ながら私の耳ではよくわからないが、それでも千夏ちゃんが奏でる音楽が美しいのだということは、はっきりとわかる。
心地に良さに身を委ね、千夏ちゃんの音楽に耳を傾けていると、ふと、ここにいる千晴の姿が思い浮かんだ。
千夏ちゃんがあれだけヴァイオリンを上手に弾けるのなら、千晴ももしかしたら何かしらの楽器を上手く扱えるのでは?
同じ華守のご兄妹なのだから。
考え出すと気になり、千晴の方へと視線を向けると、千晴は大きなピアノに触れ、ポーン、と音を鳴らしていた。