推しに告白(嘘)されまして。
「千晴、ピアノできるの?」
千晴に近づき、そう問いかけてみる。
すると、千晴は無表情のまま淡々と頷いた。
「うん、まぁ。6歳くらいまでは習ってたから」
「へぇ」
千晴の返答に私の中の興味がどんどん膨らんでいく。
6歳までとはいえ、千晴なら千夏ちゃんのように美しい旋律を奏でそうだ。
「ちょっと弾いてみてよ、千晴」
「…んー。まぁ、別にいいけど」
興味津々で千晴を見ると、千晴は気だるげに返事をし、ピアノの前にある椅子を引いた。
ゆっくりと椅子に腰掛け、千晴が視線を伏せる。
長いまつ毛が千晴の綺麗な顔に影を落とし、その美しい瞬間に私は息を呑んだ。
大きなピアノと美しい千晴。合わないわけがない組み合わせだ。
まるで絵画のような美しさがそこにはあった。
「先輩、聴きたい曲とかある?」
「え、う、うーん…」
突然千晴にリクエストを聞かれて、私は思わず考え込む。
きっとあの見るからに高そうなピアノで演奏するなら、クラシックがいいのだろうが、それがなかなか思い浮かばない。
考えること、数十秒。
私の頭の中にやっとあるタイトルが思い浮かんだ。