推しに告白(嘘)されまして。
3.許せないこと
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あの後すぐに女の子のお母さんが現れたので、私たちは女の子をお母さんに引き渡した。
女の子のお母さんは最初、目が真っ赤な我が子を見て、とても狼狽えていたが、沢村くんから丁寧な説明を受け、状況を理解すると、私たちに感謝と謝罪をした。
『ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。娘を助けていただきありがとうございます。ポップコーンもごめんなさい』
と、申し訳なさそうに頭を下げた後、女の子のお母さんがポップコーン代として数千円を私たちに渡そうとしてきたが、私たちはそれを断り、あの場を後にした。
泣いている女の子に対してあんなにも優しく、狼狽えているお母さんに対しても冷静に丁寧に対応できる私の推しはやっぱりすごい人だと改めて思う。
また一つ推しの素晴らしいところを見つけてしまった。
『…私たち戦うしかないの?』
『ああ、そうだ』
大きなスクリーンに運命diaryの主人公たちのやり取りが映し出される。
残酷な定めに気づいてしまい、信じたくないと苦々しげな表情を浮かべる主人公の少女に、少年が難しい顔で淡々と事実を述べる、そんなシリアスなワンシーンだ。
彼らが今後どうなるのかわかってはいるのだが、ハラハラする展開に、私はずっとドキドキしっぱなしだった。
原作の漫画に忠実な登場人物にストーリー展開。
あえてアレンジは入れず、真っ直ぐに原作の面白さを表現しているこの映画に、まだ数十分しか見ていないが、感動すら覚える。
泣いていた女の子の対応をしていたこともあり、沢村くんとここへ来た時には映画がもう始まっていたが、最初の数分を見逃してしまっても、それでもやはりこの映画はとても面白かった。