推しに告白(嘘)されまして。
「ずっとそうやって黙っているつもり?」
もう数分は黙り続けている男たちに私を始め、映画館スタッフの方も圧をかけ続けるのだが、男たちは何も言わない。
だが、しかしずっとこちらからネチネチと言われ続けることに耐えかねたのか、盗撮犯の1人がやっと口を開いた。
「…マジで撮ってないから。連絡が来てたから見てただけだし」
こちらと目も合わせようとせず、吐き捨てるようにそう言ったのだが、全く説得力のない言葉だ。
1人が喋り出したことによってもう1人もやっと口を開いた。
「…コ、コイツ撮ってないよ。お、俺、隣にいたからわかる…」
こちらもまたこちらと全く目を合わせようとせず、下を向いたまま、落ち着かない様子で自身が掛けているメガネをしきりに触っている。
そんな盗撮犯2人の姿に、やはり嘘をついているな、と私は感じた。
学校でよく見る嘘をつく生徒と雰囲気が2人揃ってよく似ているのだ。
「じゃあ、スマホを見せなさい。ロック解除して」
「「…っ」」
正座をする盗撮犯2人にズイッと顔を近づけ、さらに凄むと、盗撮犯2人は顔を青くして、肩に力を入れた。
そしてついに観念したのか、2人は互いに見つめ合った後、私にようやくスマホを渡した。
全く手のかかる。
ため息が出そうになりながらも、私は大男スタッフの方とスマホの中を確認する。
だが、ここで想定外の事態が発生した。
「…え」
スマホのライブラリの中に盗撮動画が一切なかったのだ。
おかしい。確かに彼らは盗撮をしていたし、様子だって明らかにおかしいのに。
それなのに動画が出てこないなんて。
内心焦っている私の横で、大男スタッフの方も「どこにもないですね」とおかしそうに首を傾げていた。