推しに告白(嘘)されまして。
「ほら、撮ってないだろ?」
盗撮犯の1人が、はは、と冷や汗を流しながらもおかしそうに笑う。
盗撮犯のもう1人、メガネをかけている方もへらりと笑った。
「そっちが勘違いしてこうなったんだよね?本当いい迷惑なんだけど?謝ってくれる?」
勝ち誇ったようにこちらを見る盗撮犯2人組に「私の目は誤魔化せない!嘘つくな!」と怒鳴ってやりたいが、証拠がないことにはこれ以上何もできない。
クソッ。悔しいっ。
何も言えずに奥歯を噛みしめていると、その声は聞こえてきた。
「ちょっといい?鉄崎さん」
気がつけば私の横にいた沢村くんが、スッと私の持っていた盗撮犯のスマホを取る。
「え」
さ、沢村くん?な、何でここに?
沢村くんの突然の登場に困惑する私なんてよそに沢村くんは慣れた手つきでスイスイとスマホを触り始めた。
「…このスマホどっちのスマホ?」
少しスマホを触った後、沢村くんが真剣な表情で私に質問する。
「…あ、えっとそっちの人」
なので私は沢村くんの手の中にあるスマホの持ち主を戸惑いながらも指差した。
すると沢村くんは「ありがとう」と私にお礼を言い、その男に近づいた。
「顔あげてください。ロック解除したいんで」
「…」
正座する盗撮犯の前にしゃがみ、私が指差した男の方へと沢村くんがスマホの画面を向ける。
だが、盗撮犯はまた黙り込み下を向いた。