推しに告白(嘘)されまして。

2.手のかかる後輩





*****



鉄崎柚子。鷹野高校進学科所属の風紀委員会委員長。
その真面目さと圧倒的迫力からくる怖さから生徒たちから〝鉄子〟と呼ばれ、恐れられており、高校1年生の秋、風紀委員長に異例の抜擢を受け、風紀委員会委員長になった。
その後、2年生でもその役目を務め、今、校門の前で腕組みをして立っている。

昨日の出来事によって、今にもにやけてしまいそうな顔に目一杯力を入れて。



「お、おい。鉄子がとんでもない剣幕で立っているぞ」

「しっ、聞こえるぞ、バカ。夏休み明けだから気合い入ってるんだよ。昨日も何人の生徒が泣かされていたか」

「と、とりあえずちゃんとした服装だよね?校則違反していないよね?私」



校門前にいる私をチラチラと見ながら複数の生徒たちが校舎へと向かっていく。
そんな生徒たちに私は一人一人視線を向けながら校則違反はいないか確認していた。

そう、今は夏休み明けの9月。
夏休み明けといえば、みんな気が緩む時期だ。
そんな時期だからこそ、校則違反をする者も多い。

じっと生徒の波を見ていると、向こうの方から一際目立つ存在が現れた。

あの校則を派手に破っている金髪は…。



華守千晴(はなもりちはる)!止まりなさい!」



私は強い口調で、金髪の男、千晴の前に立ちはだかった。



「あ、先輩だ。おはよー」



私に声をかけられて何故か嬉しそうに笑うこの男は驚くほど校則を破っていた。

まずは特徴的なふわふわの猫毛の金髪。
さらには制服まで着崩しており、ネクタイもゆるゆる。
目鼻立ちが整っており、スッとした美人で、さらに細身だが、高身長でスタイルもいい為、全てがまるでおしゃれに見え、そういうものかもしれないと思ってしまうが全部が全部校則違反だ。

このオール校則違反で、何とうちの高校の進学科の1生生だとは、驚きを通り越して信じられないものがある。
うちの高校は普通科、進学科、スポーツ科の3つの科があり、進学科の生徒は比較的真面目な生徒が多く、校則もちろん守る生徒が多いのだ。
だいたい校則を破っているのは普通科の生徒かスポーツ科の生徒だ。

それが何故、進学科の生徒であるコイツがこんなダイナミックに校則違反をしているのか。



「ネクタイくらいちゃんと締める!」



千晴に近づき、乱暴に千晴のネクタイを締める。
だが、千晴はそんな私に抵抗することなく、されるがままだった。
いつもいつも何故かこれなのだ。





< 4 / 309 >

この作品をシェア

pagetop