推しに告白(嘘)されまして。
4.幸せな時間
*****
盗撮犯を無事、送り出した後、私たちはシアター内へと戻った。
しかし、かなり揉めていたこともあり、戻った時には、もう映画はクライマックスを迎えていた。
その為、結局映画はあまり見られなかったのだが、映画館のスタッフの方が、盗撮犯を見つけ、対応してくれたお礼にと、また好きな映画を一本観られるチケットをくれたので、あまり悲しい気持ちにはならなかった。
むしろ、それでも盗撮犯を捕まえられたことの方が嬉しく思えた。
映画はまた見に行けばいいだけだ。
もう日が暮れ始め、街に灯りがつき始めた頃。
私たちは映画館から出て、帰る為に駅へと向かっていた。
悠里くんと並んで、街の中をゆっくりと歩く。
幸せな時間の中で、私は今日という最高の一日に思いを馳せた。
今日はとても楽しかった。
運命diaryに登場した神社で、たくさん風景や推しの写真を撮り、映画にまで行って…。推しの素晴らしすぎるところをたくさん見れたり、改めて知れたり。
推しとたくさんの時間を過ごすことができた今日という日を、きっと私はキラキラと輝く宝物のように大事にし、忘れられないだろう。
今日は私にとって人生最高の一日だった。
しかしきっと沢村くんにとっては違っただろう。
私のせいで。
「…沢村くん。さっきはごめんね。せっかくの映画が私のせいでほぼ見れなくて…」
申し訳ない気持ちでいっぱいになり、ぎゅっと両手に握り拳を作る。
もっと私がちゃんと盗撮犯の対応をしていれば、沢村くんの手を煩わせることなんてなかった。
動画の保存場所に気づかなかった私のせいで沢村くんは映画を見れなかったのだ。
「え?何で謝るの?鉄崎さんのせいじゃないじゃん」
「…え」
「悪いのはどう考えても盗撮していた人だよ。鉄崎さんは何も悪くない」
申し訳さなそうにしている私を不思議そうに見た後、沢村くんが優しく笑ってくれる。
夕日に照らされる私の推しはなんて眩しい存在なのだろうか。
この輝きとかっこよさはきっと世界を救う。