推しに告白(嘘)されまして。
21.アナタと歩む未来。
1.卒業
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少しひんやりとした体育館に、厳かな空気が流れる。
在校生、教師、保護者、そして卒業生が見守る中、舞台上では、前生徒会長、田中が卒業生を代表して、挨拶をしていた。
「在学中、勉学だけではなく、学校行事を通して、さまざまなことを私たちは学び、体験してきました。そこにはいつも友人がおり、時にぶつかり合い、時に励まし合い…」
田中の凛とした声がマイクを通して、この体育館内に響き渡る。
もう感極まって泣いている者、眠気に襲われて頭をゆらゆらと揺らしている者、真剣な顔で前を見据えている者。
卒業生たちはさまざまな様子で卒業式に臨んでいた。
私もその中でただただ田中を見つめていた。
三月上旬。
私は今日、ここ鷹野高校を卒業する。
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長く感じた卒業式を終え、クラスでの最後のホームルームも終えると、生徒たちは皆、校庭へと集まっていた。
ここで皆、いろいろな人と最後の時間を過ごすのだ。
私はそこでハンカチを片手に雪乃といた。
「…ゔっ、ゔぅ」
「まぁだ泣いてんの、柚子」
ボロボロと涙を流す私を雪乃がおかしそうに見つめる。
だが、その瞳はどこか暖かく、雪乃の優しさを感じた。
それが余計私を泣かせた。
「だ、だって、中学とは違うじゃん…。もう一緒の学校じゃないし…」
「あははは、そうね」
涙を止められない私を、雪乃はどこか嬉しそうに笑い、ぎゅうと抱きしめてくれる。
暖かい雪乃の体温を感じながらも、私はゆっくりとまぶたを閉じた。
雪乃と私は中学からの親友だ。
しかし、当然だが、進学先は違った。
2人とも地元から離れた違う大学へ行く。大学同士の距離は近いので、会おうと思えば会えるが、逆に言えば会おうと思わなければ会えないのだ。
それは私の推しである悠里くんも同じだった。