推しに告白(嘘)されまして。
「ねぇ、柚子」
ふと、私の背中をさすっていた雪乃が口を開く。
「結局、アンタってどっちを選んだの?」
それから興味深そうにそう聞いてきた。
その瞬間、私の涙は止まった。
雪乃の〝どちらを選んだのか〟という質問の意味。
それは千晴なのか、悠里くんなのか、ということだ。
約一年前、悠里くんと別れ、千晴の告白も受け入れず、私は誰とも付き合わない道を選んだ。
それでも私たちの関係はあまり変わらず、雪乃を始め、全校生徒は私たちの関係にずっと注目し、関心を寄せていたのだ。
鉄子は一体、どちらと付き合っているのか、と。
この一年、千晴派閥と、悠里くん派閥でまぁ、揉めに揉めていた。
いつの間にかそういう団体ができており、盛り上がりすぎて大乱闘を繰り広げる、という事件もあり、何度もその仲裁に入った。
そして田中にもよく叱られた。
だが、そんな学校中を巻き込む事態になっても、私はどちらも選ばなかった。
「明日からもう王子には会えないよ?千晴くんもいないよ?アンタ、本当は好きなんでしょ?」
動かなくなった私の頬を雪乃がツンツン、とからかうように突く。
ふざけているようにも見えるが、これが雪乃の優しさだ。
最後に私に後悔させない選択を迫っているのだ。
「………わ、私は」
重たい口をやっとの思いで開いた、その時。
「「きゃあああ!!!!」」
この場に女子生徒の黄色い声が響いた。
何事だ、とその場にいた生徒たちが声の方へと視線を向ける。
私も例に漏れることなく、そこへ視線を向けると、とんでもなくたくさんの女子生徒が何かを中心に大きな円を作っていた。