推しに告白(嘘)されまして。
「ゆ、悠里先輩!言わせてください!す、好きです!」
その中から必死に叫ぶ女子生徒の声が聞こえる。
「わ、私も!鉄子先輩とのこと応援してます!悠里先輩派閥永久不滅です!」
さらにまた別の必死な女子生徒の声が。
「しゃ、写真写真!」
「悠里先輩!こっち!こっち見てー!」
「鉄子先輩の写真!ほら、ここに鉄子先輩の写真がありますよー!!!」
スマホを高く上げ、なんとか悠里くんを写真に収めようとする者、一生懸命自分の方を見てもらうとする者、何故か私の写真を天高く上げている者など、とにかくカオス状態だ。
どうやらあのカオスサークルの中心で餌食になっているのは、私の推し、悠里くんのようだった。
そしてよく見るとあの人だかりの外には、小さくなって女子生徒たちを見つめる、男子生徒の姿もあった。
「ゔ、ゔぅ、こんなに人がいたら悠里先輩に渡せないじゃん…」
泣きそうになりながら花束を抱える生徒は、悠里くんのバスケ部の後輩だ。
その後輩の周りには、三年生のバスケ部もいた。
「慎!行ってこい!あの女子の壁を突破してこそ、我が鷹野高校バスケ部副部長ってやつだろ!?」
バンっと背中を押すようにその中の一人が明るい笑顔で、後輩の背中を叩く。
「焼香くらいは立ててやる」
それからもう一人が半笑いで後輩を見つめていた。
後輩を面白おかしく見つめるバスケ部の三年生全員の手には花束がある。
つまり、あの後輩は悠里くんにも花束を渡したいのだろう。
周りを囲む女子生徒たちの迫力に押されて、できないみたいだが。