推しに告白(嘘)されまして。
「ごめん、俺じゃあどうしようもできなくて…。助かったよ。ありがとう」
私の側まで来た悠里くんはそう言って困ったように笑った。
眉を下げているその姿も魅力的だ。
「いや、このくらい全然」
こちらをまっすぐと見つめる悠里くんに、私は軽く首を振る。
私はお礼を言われるようなことなどしていない。
人として当然のことをしたまでだ。
するとそんな私に悠里くんは口元を緩めた。
悠里くんの優しい顔に、私が好きだと書いてある。
その表情に思わずドクンッと心臓が鳴った。
この一年、ずっと向けられてきた破壊力のありすぎるあの表情。
悠里くんは言葉にこそしてこなかったが、行動で、表情で、声音で、態度で、自分の全てで私を好きだとずっと言ってくれていた。
私も悠里くんのことが今でも好き。
だが、あの時と変わらず、推しとして好きなのだ。
だから私はやはり悠里くんには応えられない。
そう思うたびに、チクッと胸が痛んだ。
「…ねぇ、柚子」
突然、悠里くんが私の名前を呼ぶ。