推しに告白(嘘)されまして。




「そんな顔しないで。俺、柚子には笑っていて欲しいから」



心情を表には出していないつもりだったが、悠里くんはわずかな私の変化にも気づき、そっと私の頬に触れた。
悠里くんの優しい熱が私の頬にわずかに残る。

ああ、私の推しはやっぱり、完璧で究極の存在だ。
その暖かさと優しさで私をじんわりと温めてくれる。

思わず悠里くんに心を奪われていると、悠里くんは徐に自分のブレザーの第二ボタンへと手を伸ばした。
そして迷いのない動きで、それを引きちぎった。

…え。

悠里くんの思わぬ行動に、私は何度もまばたきをする。
な、何故ボタンを急に?

わけがわからなかったが、悠里くんの行動をじっと見ていると、悠里くんはそのボタンを私に差し出した。



「これ、柚子にあげる」

「…え」



推しの私物…?

おそるおそる両手を悠里くんに伸ばして、ボタンを受け取る。
私の手の中で輝きを放つ、小さなボタンを私は思わず凝視した。

推しが三年を共にしたボタン…。



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