推しに告白(嘘)されまして。
「第二ボタンって、心臓に一番近い場所にあるでしょ?これをあげるってことは、心をあげるってことなんだって。だから柚子に」
優しい風に乗って、柔らかな悠里くんの声が聞こえる。
教えられた意味があまりにも甘酸っぱくて、私の頬は一気に熱を持った。
こんなの、ずるい。
好きになっちゃう。
私の瞳にハートマークでも現れそうになった、その時。
「先輩、見つけた。行こ」
突然、この場に千晴が乱入してきた。
そして気がつけば私の手を取り、どこかへ走り出していた。
「ちょ、千晴!まっ!」
「待たない」
慌てて千晴を止めようとしたが、千晴はイタズラっぽく舌を出して笑うだけで、変わらず走り続ける。
まだ私と悠里くんは話をしていた。
なので、今すぐ千晴を止めて、悠里くんの元へと戻らなければならない。そうでなければあまりにも失礼すぎる。
だが、私は優しく、けれど力強く私の腕を掴む千晴を振り解けなかった。
視界の端で、悠里くんが「…あ」とこちらに手を伸ばしている姿が見える。